陽子に送られた楽俊からの手紙

 

 

陽子、久しぶり。元気にしてるみたいだな? おいらも元気だ。手紙を有難う。

いつもの鳥じゃなかったから、吃驚したよ。字、綺麗なもんじゃないか。

間違ってなんかなかったよ。自信を持って大丈夫だ。心配することなんてないぞ。

こないだは、楽しかったな。来てくれて嬉しかった。

陽子は国政のことで悩んでたみたいだったけど、解決したみたいでよかった。

冢宰様が良くして下さるのは本当にいいことだな。おいらも浩瀚様を尊敬してる。

景台輔の方は……。ま、あんな風な方だから。それはそれと諦めて、上手く

付き合っていくしかないかもな。景台輔ももう少し言葉の使い方を考えて下さると

いいなぁ、とは思うけどな。そこんとこは無いものねだりしても仕方がないもんな。

とりあえず、今はうまくいってるようで安心したよ。

おいらの方は今、課題論文を書くのでてんやわんやだ。資料集めに苦しんでる。

書き始めたらなんとかなるとは思うんだけどな。

そんなわけで、しばらくはまた会えそうもないなぁ。陽子の手紙で自分を励まして

頑張ることにするよ。また、手紙書くから。

長い返事は困るって言ってたし、これぐらいにしようかな。それじゃ、この辺で。

陽子も王様業と字の勉強、頑張ってくれな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

送られなかった楽俊の手紙

 

 

おいらの方は今、課題論文を書くのでてんやわんやだ。資料集めに苦しんでる。

書き始めたらなんとかなるとは思うんだけどな。

先日、図書府に行ったら本を貸してくれないんだ。貴重な本だからって。

貴重だからこそ読みたいんだけどな。

さすがにそんなの、街には何処にも置いてないし、困ってる。

あるはずの物も、ないって言われてしまったし。念書を書くって言ってもダメなんだ。

おいら、そんなに信用ないのかなぁ?

貸し出し期日を延滞したことも、破損させたことも一度もないんだけどな。

今までの積み上げた信用も、結局は役に立たないんだろうか。すべての人に好かれたいと

思わないけど、せめて欠片でもいいからおいらのこと、分かってもらえないのかな。

諦めるのは簡単だけれど、諦めてしまうとその分、何かを失うような気がするんだ。

声を張り上げて、喧嘩がしたい時があるよ。

 

喧嘩すら、させてはくれないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破り捨てられた殴り書き

 

 

--------------------------------------------------------

 

どうして

 

おいらは

 

半獣なんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽子に送られた楽俊からの手紙

 

 

手紙、届いたよ。全部自分で読めたってのは、おいらのおかげなんかじゃないよ。

陽子の頑張りだ。偉いな、やっぱり陽子はすごい。

おいらの字、達筆って褒めてくれて有難う。でも、まだまだだぞ。遠甫老師なんて

もっと水が流れるみたいな字じゃねぇか。浩瀚様の字もおいら、好きだなぁ。

おいらの字は、父ちゃんの真似だからな。文章も読みやすかったって?

大学の老師も褒めてくれたけど、おいらの父ちゃんの方がずっと上だ…って、

これってもしかして身内自慢なのかな。やめよう。

とにかく、そんな持ち上げられると照れちまうから。そうそう、良ければ蓬莱の国の

文字や言葉を、おいらにも教えて欲しいな。こっちの字と共通点もあるんだよな?

すごく面白そうで、興味あるんだ。

えーと、自分で全部読んで誰にも見せないから何を書いてもいいよってことだったけど。

これは内緒の話を書けってことなのかな?

別に前回も祥瓊の目を気にしてた訳じゃないけどな。

うん、別に今はもう何もないよ。

前回書いた資料集めの事も、いつもみたいに夜中に延王がいらした時に、

………いや、あれはホントにやめてほしいんだけれども…………、

その時に泣き付いてみた。何しろ、絶対必要な資料だったから。

そうしたら、朱衡様がお持ちの書籍だったんで、お貸し頂けたんだ。本当に有難い。

あんまりこういう特別な伝手を頼りたくはないんだけれどな。うん。

おいら、陽子がいてくれて本当に良かったなって思うんだ。

あ、別にこの特別な伝手が云々って訳じゃなくて。

陽子が王様じゃなくて、海客だったとしてもおいら、陽子に会えたらきっと

幸せだったと思う。

ああ、なんだか書いてて照れてきた。ごめんな、急に変なこと書いて。

でも、今一番伝えたいことだし、陽子しか読まないんならいいよな。

陽子、本当に有難う。

また、手紙書くな。この手紙がつくころには課題論文も終ってるだろうし。

遊びに来てくれな。良ければ慶国にも行きたいけれど。

とりあえず、それじゃ。

長くなってごめんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

送られなかった楽俊の手紙

 

 

おいら、陽子がいてくれて本当に良かったなって思うんだ。

多分、生きていくには自分一人だと幸せにはなれないんだろうな。

時々、おいらは半獣だということがすごく辛くなるんだ。

おいらがどんなに頑張っても、それを見てくれない人にはその頑張りは存在しないし、

おいらはただの価値の無い半獣なんだ。

理解してくれないなら、もうそれで構わないって言ってしまうのは楽だけど。

でも、簡単に諦めてしまったら、もしかしたら得ることが出来たかもしれないものまで

失う事になるんだよな。諦めるとかそういうことじゃなくって。

おいらはおいらのままで、変わることなくありたいな、って。

今は、そう思うんだ。

でも、その気持ちって陽子がいなきゃ多分なかったと思う。

陽子がおいらのことを友達って言ってくれるから、おいらは胸を張って生きていられるんだ。

おいら達はきっと、生き物の中で一番弱い生き物なのかもしれないな。誰かが傍にいて、

誰かに大切に思われていなきゃ、きっと自分で自分を大切に出来ないんだろう。

おいら、陽子に会えて幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

机の中にしまわれた、楽俊の手紙

 

 

----------------------------------------------------------

陽子

陽子がいるから

おいらはおいらでいられる

 

陽子がいるから

おいらは半獣でも辛くない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽子

貴女がいるから

私は、私であることがこんなにも誇らしく

 

私が半獣であることが

これほどまでに、しあわせなのでしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

了.

 

2001.11.27.


 

当初から漫画化は不可能だと言われていた作品ですが、皐妃さんの手によって
見事に「恋文」として生みなおされた作品。コラボレーションの究極の形といいますか、
小説と漫画の違いを明確に理解した上で、思う存分お楽しみ頂けた作品ではないでしょうか。
もし、まだ漫画をご覧になっていない方は、すぐに直行してここちよい涙を流してきて下さい。
きっと作品の中から皐妃さんのあたたかな言葉を聞き取ることが出来るはずです。



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送